【エンジニアでない方向け】 Microsoftが75億ドルの値をつけたGitHubとは

Microsoft社がGitHub社を75億ドルで買収しました。

買収の詳細については多くのIT・経済記事で報じられているため割愛しますが、その際日経の記事がGitHubを「設計図共有サイト」と説明し、それに対してエンジニアが「共有するのは設計図じゃない、ソースコードだ」と反発して拡散したのも、日本においてこの話題を広める一因になったのではないかと思います。

しかし、GitHubというサービスを理解する上で、そのどちらの表現も適切ではありません。

この記事では、エンジニアでない方向けに、GitHubっていったいどんなサービスなのか、なぜMicrosoft社がいちIT企業のGitHub社を75億ドルという高額で買収したのかについて考えていきたいと思います。

GitHubは「ソースコード共有サイト」?

Twitterを見ていると、多くのエンジニアがGitHubのことを「ソースコード共有サイト」だと主張しています。確かにGitHubはソフトウェア開発者が自分たちの「ソースコード」をインターネット上に「共有」する「サイト」です。ソフトウェア開発者はソフトウェアのソースコードをGitHubにアップロードし、チームのメンバーがそれを共同で修正・追加することでソフトウェア開発を効率化するという使い方がエンジニアにとって一番身近な使い方なのだと思います。

しかし、「ソースコードの共有」はGitHubが提供する価値そのものではありません。

GitHubは、自分自身のサービスを以下のコピーで表しています。

The world’s leading software development platform

これは、GitHub公式サイトのトップページのタイトルに使われているコピーです。Googleで”GitHub”を検索すると見ることができます。

ざっくり日本語訳すると、「世界を牽引するソフトウェア開発プラットフォーム」となるでしょうか(”world’s leading”の部分が訳しづらいですね)。

少なくともこれを見る限り、GitHubは自身のサービスを「共有サイト」ではなく「ソフトウェア開発プラットフォーム」と表現しています。共有するだけのサイトでなく、ソフトウェア開発という活動全般を支援するプラットフォームなのです。

では、ソフトウェア開発プラットフォームとは何でしょうか。GitHubは開発をどのように支援するのでしょうか。なぜ世界中のソフトウェア開発者はこのサービスを利用するのでしょうか。

なぜソフトウェア開発者はGitHubに集まるのか

ソフトウェア開発者の世界は「技術」の世界です。技術は世界共通であり、ソースコードも同様に世界共通です。極端な場合、英語が全く話せなくても技術があれば地球の裏側の人とも一緒に仕事ができます。

そして、GitHubには世界中2,800万人もの開発者のソースコードが公開されていて、それらは誰もが無料で閲覧し、議論し、さらには開発に参加することができるようになっています。

たとえば、以下はWebサービスの開発現場で頻繁に利用されるRuby on Railsのソースコードと、その開発中に生じた議論の一部です。

rubyonrails_sourcecode
Ruby on Railsのソースコードの一部

https://github.com/discourse/discourse/blob/master/app/helpers/application_helper.rb

 

rubyonrails_discussion
Ruby on Railsの開発に関する議論

https://github.com/rails/rails/issues/32995

GitHubを利用することで、ソフトウェア開発者は世界中の他のソフトウェア開発者のアイデアを吸収することができ、自身のスキルアップにつなげられるだけでなく、そこで開発されるソフトウェアの品質も同時に向上させることができる、というのがソフトウェア開発者がGitHubを利用する大きな理由です。

また、IT業界ではGitHubに対する「世界中のソフトウェア開発者御用達」のイメージがすでに広まっているため、技術力の有無を重視する会社では採用活動で応募者のGitHubアカウントを求めることも珍しくありません。GitHubのアカウントを見ればその応募者が今までどんなソースコードを書いてきた(そして公開してきた)か、他のどんな技術に興味を示してきたか、世界のエンジニアとどのようなコミュニケーションをとってきたかが確認でき、その人が仕事でどのような成果を出せる人材なのかを判断する良い材料になるからです。

このように、GitHubは「ソースコード」を中心て、開発、スキルアップ、採用など世界中のソフトウェア開発者のあらゆる活動の中心となる場を提供し、ソフトウェア開発に関わる幅広い人にとって不可欠なサービスとして認知されているのです。

これが、ソフトウェア開発者から見たGitHubというサービスです。

Microsoftが買収したことに対する懸念

MicrosoftがGitHub社を買収したことで今後のサービスの進化を期待する声が上がる一方で、GitHubのサービスがMicrosoftにコントロールされてしまう未来を懸念して、この買収を否定的にとらえているソフトウェア開発者が多いのも事実です。

例えばGitHubを利用するためにはMicrosoftアカウントを取得しなければならない、またはMicrosoftのサービスと競合する他社サービス(たとえばクラウドの分野におけるAmazonのAWSやGoogleのGoogle Cloud Platformなど)との連携がしづらくなる、などのMicrosoft本位の施策への懸念です。

他にも、現状でMicrosoft自身がGitHubと競合している製品(たとえばGitHub EnterpriseとVisual Studio Team Services)について、GitHub側の製品の提供中止など、そのユーザーの不利益になる扱いをするのではないか、といった懸念も聞かれます。

しかし、先ほど説明したとおり、GitHubの価値は「世界中のエンジニアがそこに集まる」ことによって発生します。75億ドルも出して買収したGitHubの価値を、そのようなMicrosoft本位の目先の施策によって落とすようなことはしないのではないか、というのが僕の意見です。

またMicrosoft自身がGitHubを最も利用している実績がすでにあり、最もその価値の恩恵を受けている企業であるため、どうすれば世界中のソフトウェア開発者がよりGitHubに集まるか、という判断はとても正確にできるのではないかと思います。

今回の買収にあたって公開したサティア・ナデラのブログにも、以下のような「開発者本位(developer-first ethos)」の考えが書かれています。

Most importantly, we recognize the responsibility we take on with this agreement. We are committed to being stewards of the GitHub community, which will retain its developer-first ethos, operate independently and remain an open platform. We will always listen to developer feedback and invest in both fundamentals and new capabilities.

まとめ

世界中のソフトウェア開発者がGitHubにアクセスすることで、新しいソースコードや新しい議論、新しいアイデアが次から次へとGitHubに集まります。このGitHubというサービスを提供するGitHub社をMicrosoftが買収することは、開発だけでなく学習や議論、開発者同士のつながりなど、世界中のエンジニアの生活の中心をMicrosoftが手にすることを意味します。

「GitHubと連携しやすい」から、「GitHubと同じ会社だ」から、「世界中の開発者が使ってる」から、など、今まではなかった様々な理由で AzureMicrosoft365 といった開発者向けのMicrosoft製品を使い始めるエンジニアが出てくることも想像に難くありません。

75億ドルという額はひとつのIT企業の買収額としてはとても高額に見えるかもしれませんが、その見返りに「世界中のソフトウェア開発者が集まる場を手に入れた」と言えるほどの意味が今回の買収にあります。

世界中のソフトウェア開発者へリーチできる強みをどのように収益につなげるのかはこれからのMicrosoftの施策次第ですが、それもまたこの先に大きな可能性が広がっていると捉えることができるのではないでしょうか。

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