Twitterを見ていたら、
「転職しないと給料が上がらない」っての現状では現実でもあるとは思うけどやっぱ間違ってるとも思う。理想を言うと人物の評価は所属している会社とは独立であるべき。なので別に転職とかしなくても本来は給料は上がるべきなんだよね。現実そうはなってないけど。
— Urabe, Shyouhei (@shyouhei) 2018年5月14日
というツイートが流れていました。
エンジニアの技術は普遍的なものだから、同じスキルなら給料も会社によって上下しないのが望ましい。つまり転職しなくても給料スキルが上がれば給料も上がるべき。という趣旨だと受け取ったのですが、これを見て「僕はそうは思わないなー」ということを考えたので、この記事にまとめてみたいと思います。
同じモノの価値は同じじゃない
まず前提として、僕は同じモノでもそれにいくら支払うかは人によって様々であると考えています。
例えば、海外で爆発的に普及している低スペックで低価格(10,000円とします)なAndroid端末があったとして、Androidアプリを開発している国内の会社がこの端末を動作保障のために購入する場合、いくらなら「買い」でしょうか。
日本国内にしかサービスを提供していない会社であれば、自分たちのアプリがこの端末で利用されることはほとんどないため、定価の10,000円であったとしても特別に購入したいとは思わないでしょう。
一方で、外国人向けのサービスがメインの会社であれば、自分たちのアプリのユーザーのほとんどがこの端末を利用していると想定されるため、郵送費や諸々のコストや販売元の言い値で値段が30,000円、50,000円と膨らんでもなんとか購入して動作を保証しておきたいはずです。
このように、同じモノに対する価値は買い手によってさまざまで、それは個人の消費でも、企業の契約でも、雇用契約でも、お見合いサイトでも同じことが言えると考えています。
なお、このようにモノの価値が人によって違うことは「マーケット感覚を身につけよう」という書籍でさらに詳しく、分かりやすく説明されています。オススメです。
同じスキルの価値はどの会社でも同じではない
この考え方はエンジニアの雇用契約の話でも同じだと考えています。
つまり、同じスキルのエンジニアに支払いたいお金(雇用の場合は給料)は、どの会社も同じではない、ということです。
スキルの価値は、会社がどの程度それを必要としているかによって上下します。
例えばWebサイト上でビジネスをしてきて、今まさにビジネスを拡大するためにAndroidアプリを新規で開発したい、でもAndroidアプリを開発できるエンジニアが全くいない、という会社にとって、「Androidアプリを1年間開発してきました」というエンジニアは多少高い給料を払ってでも雇いたい人材です。
逆に、Androidアプリを中心にサービスを展開してきた会社にとって、「Androidアプリを1年間開発してきました」というエンジニアは特別な存在ではなく、給与やその他の待遇はむしろ「若手」として扱われてしまうのではないでしょうか。
上記は組織の体制の話でしたが、他にもどれだけ資金に余裕があるか、どれだけエンジニアの定着に力を入れているのか、どれだけ緊急でエンジニアを必要としているか、などのパラメータでいくらでも提示される金額は変わり得ます。
つまり、自分のスキルが変わらなかったとしてもそのスキルを高く買ってくれる会社は探せばあるはずなので、その会社を探して転職を繰り返すことはとても理にかなっていると考えられます。
まとめ
先ほど紹介した書籍「マーケット感覚を身につけよう」では、価値を見極める力がビジネスをする上で大事だと説明されています。
売り手は何を売ろうとしているのか、その売ろうとしているモノは買い手にとってどれだけの価値を産むものなのかを考え、「この買い手はいくらなら買ってくれる」「この売り手はいくらなら売ってくれる」を分析することで、「値札」や「相場」にとらわれない、自分の価値観に基づいた選択ができると書かれています。
例えば僕はフリーランスですが、報酬の交渉をする際は必ず「自分のスキルにいくらまで支払ってくれるか」を意識します。
つまり、
- 自分が断った場合に代わりがいるのか
- 自分はそのチームでどんな位置づけなのか(唯一のエンジニア?たくさんの人手の中の1人?)
- 自分の何をどれくらい評価しているのか
といった部分です。
これにより「値段を高く設定しても自分は必要とされる」と予測したら強気で交渉しますし、逆に「あまり必要とされていない(つまり値段を下げたい)」と判断したらこちらから理由をつけて断ることもあります。
注意したいのは、断った・断られた結果、収入が途切れてしまうなど自分へのダメージが大きい場合はこちらから値段を下げることもあり得る、ということです。
余談ですが、就職活動で企業分析や自己分析が大事と言われるのも同じような理由だと考えています。会社が必要としている人材と、自分が会社に求める条件がぴったり合えばそれほど楽しい仕事はないはずですが、そもそも会社が何をどのくらい必要としているのか、また自分はどの条件なら受け入れられるかが分析できていなければいつまでたっても「ぴったり合う」が判断できないからです。
最初のツイートに戻ると、僕は「転職を重ねて給料を上げる」ことは間違いではなく、「自分のスキルにもっと高いお金を払ってくれる会社が必ずある」以上は当然のことと考えています。スキルが上がったのに給料が上がらない場合、「本当にそのスキルはその会社で必要とされているのか」と考える良いきっかけなのではないかと思います。